東京高等裁判所 昭和30年(ネ)166号 判決
反証のない本件では本件玄蕎麦の売買のような双務契約において売主の目的物の引渡義務と買主の代金債務とは同時履行の関係に立つものと認むべきは勿論であり、殊に前記の通り買主たる山本清が数回に亘つて荷為替手形の支払を遅延し、これが為売主たる控訴人に多大の迷惑を与え、電報で数回に支払を請求をしたのみならず契約解除の意思表示までしたような事情にあり、このような場合には、山本清において控訴人に売買契約の履行を催告した上その不履行を理由として契約を解除するには、少くとも控訴人においてあらかじめ受領の拒絶をしないかぎり、解除の意思表示の時までに先ず何等かの方法により代金支払の現実の提供をすることを必要とするものと解するのを相当とするところ、本件にあらわれたすべての資料によつてもこのような控訴人の受領拒絶または代金支払の現実の提供とすべき何等の事実をも認めることができないから、右契約解除の意思表示はこのような現実の履行の提供を伴わない為その効果を生じなかつたものと解さざるを得ない。
(内田 原増 高井)